その笑顔、私のモノ
「嫌!」
本当は帰りたい。
だけど、私の口は思ってもないことを言ってしまう。
言った直後なのに、既に後悔している。
だって、漣がショックを受けたような顔をしたから。
そんなことを口走ってしまった自分に、嫌気がさした。
「でも、彩子ちゃん眠いんでしょ?
とりあえず今日は帰ろ?」
私の事をわかっている漣はそう言う。
たしかに眠くて、今にも目が閉じそうだ。
重い瞼を、無理やり開けている。
瞬きをするだけでも、そのまま目を閉じてしまいそうだった。
「でも…れん…」
“に迷惑かけたし、私の事好きじゃないんでしょ?”
そう言おうとしたのに、途中までしか口は動いてくれなかった。
だから、その後された、漣と遥人の会話は聞こえなかった。