その笑顔、私のモノ
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彩子が「でも…れん…」と呟きながら寝てしまった後、漣と遥人は優しい目で彩子を見ていた。
そしてその後、こんな会話が繰り広げられていた。
「おまえ、彩子をこんなに泣かせるなんて…許さないからな!」
遥人は優しい顔から、キリッとした顔に切り替えて漣を見た。
そして、それを言われた漣も真面目な顔をして、言い返す。
「たとえ、あんたに許されなくても、彩子ちゃんは僕のだ。
世界一好きなのは彩子ちゃんだけなんだから!
あんたには渡さない。」
普段の漣なら、考えられないような強気な言葉が出てくる。
でも、遥人はその言葉を聞いて、あれ?っと思った。だって、彩子が言っていたのは、漣に他に好きな人が居るみたい…って言っていたから。
彩子が勘違いしているのか、漣が嘘をついているのか…
彩子のこと好きなのは、別に嘘ではない。
だから、俺は彩子の味方になる。
「とにかく、彩子ちゃんは僕が連れて帰るから。」
漣はそう言って、遥人の膝の上に頭を乗せて寝ていた彩子をそっと優しくお姫様抱っこした。
遥人は連れて帰ると言いたいところだけど、ホテルに泊まっているので、それは出来ない。
だから、素直に漣に渡すしか無かったのだ。
漣は抱き上げた彩子を愛おしそうに見つめる。
そして、遥人に向かって、“あんたには渡さない。”と言うように、キッと睨んでから出口に向かった。