その笑顔、私のモノ


「漣、昨日迎えに来たの?」


どうやってあの場所を探し当てたのかは分からない。
本当に来てくれたとして、昨日のことがあるまでは素直に喜べたかもしれない。
でも、知ってしまったことを知らないフリまでしては喜べない。


「う、うん。…すぐに行けなくてごめんね…
彩子ちゃん、足速いから、すぐ見失っちゃって…」


漣がしょんぼりしながら言う。
追いかけてくれなかったって思ったのは、ただ追いかけたけど見失っただけだったんだ…
それに、迎えに来てくれたのは夢じゃなくて、本当だった。
それを聞けただけで、嬉しい気持ちになる。

“だけど、電話なんかしなければ、あんなことにはならなかった。”そう考えてしまって、素直になれない私は、思っていることと正反対の事を言ってしまった。


「どうせ、有坂さんとずっと電話してたから来れなかったんでしょ?
そんなに好きなら、別れてあげるから有坂さんの所に行けば!?」


逆ギレ気味で言ってしまった。
言いながら、悲しくなってくる。
ポロポロと溢れて止まらない涙が頬を伝った。
本当は別れたくなんてない。
自分が思ってるより、付き合ってこの1年で漣のことが大好きになっていたから…


「彩子ちゃんは、僕が有坂さんの事好きだと思ってるの…?」


漣が冷静なまま静かにそう言った。
そう言われても…
だって、そうなんでしょ?


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