その笑顔、私のモノ
「…あ、彩子ちゃん…それ本当?…」
漣は信じられないというような、ショックを受けたような顔でそう言った。
そんな漣を見た私は、想像と違う反応にびっくりする。
それに、そんな反応をされたら私の事がまだ好きなのかと勘違いしてしまう。
「ほ、本当に決まってるじゃん!!」
ここで今言った言葉がぜんぶ嘘だと言ってしまったら、優しい漣のことだからきっと、有坂さんのことが好きでも私と別れないと思う。
だからこそ、本当の気持ちを言う訳には行かなかった。
漣に無理してまで、一緒にいて欲しくはない。
「彩子、ちゃん…、本気なら…それで彩子ちゃんが幸せになれるのなら僕はいいけど。
これだけは聞いて…。」
さっきまでびっくりしていた漣が、ひと息ついて、落ち着きを取り戻してからそう言った。
その顔はいつもの笑顔じゃなくて、真剣でとってもカッコよく見えた。
「僕は別に有坂さんが好きな訳じゃない。
ただ…少し理由があって…今はまだ言えないんだけど…1週間後に言えるから待って欲しい。
とにかく、僕に1週間ちょうだい?
その男が本当に好きなら、1週間後そっちに行けばいい。
その1週間で気が変わるようなら、僕にもチャンスをちょうだい。」
漣は私を引き止めるように必死にそう言った。