その笑顔、私のモノ


「こないだ、彩子が山本さんに呼ばれた時あったでしょ?
その時見ちゃったんだよね…あんた達がイチャイチャしてるところ…。

彩子が呼ばれたあとトイレに行こうとしたら、見えちゃったんだよね…隠してると思ったから今まで言わなかったんだけど…。」


梓は黙っててごめんね。と言うようにそう言った。
でも、それを言うのは私の方だ。
見られてたなんて…
たぶん、梓が言っているこないだって、企画のことで呼ばれたのかと思ったら、いきなり抱きしめられたやつだ。

外からは見えないようになっていたはずだけど、きちんと閉まってなかったドアの隙間から見えたんだろう…。


「梓、隠しててごめんね…。」


きっと、知っていたなら聞きたいのを我慢していたんだろう。
梓は、そんなことはいいから…早く話してというように促してきた。

私は、“あのね…”とここ最近あったことを話し始めた。

デート中に有坂さんから電話がかかってきたこと。
遥人と話した事。なぜか、1週間まってと言われたこと。
まだ好きなのに、思ってもないことを言ってしまったこと。
昨日喧嘩をしてしまったこと。そして、初めて別々に寝たことを話した。

話し終わるころには、落ち着くどころか思い出してしまって、収まったはずの涙が溢れていた。

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