その笑顔、私のモノ

言ってくれた梓に感謝だ。
見ないつもりで電源を切ったのに、きっと気になりすぎて何もできなくなる。
それじゃ意味ない…


「確かに、そうだよね…。」


私は、ケータイを開いてみることにした。
電源を付けて、震える手で画面を開く。

(メール1件 電話10件)


「えっ…。」


通知を見てびっくりする。
メール1件はわかる。
わかるよ…でも電話10件って…
時間を見てみると、私がメールを送った直後から電話がかかってきている。
いくらかけても出ないと思って、最後にメールを送ったのだろう。

メールを開いてみると、漣の優しさが伝わってきた。

(彩子ちゃん、いつでも帰ってきていいんだからね?
彩子ちゃんが、僕と一緒に居るのが嫌なら無理に帰ってきてとは言わない。
ただ、こないだ言った1週間がたったら話をさせて?
体調に気を付けてね。
漣)

文字数は少ないけど、この着信の数とこの言葉で漣が心配してくれていることが伝わってきた。
私だって、漣のいる家に帰りたい。
だけど、本当に浮気じゃないのか…有坂さんと連絡を取っていた理由も教えてもらってない。
そんな状態なのに、信じて待つだけなんてできないし、そのまま平気で暮らすなんてできない。


「漣…」


と、私は無意識につぶやいていた。

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