その笑顔、私のモノ
「え〜、でもぉ〜これじゃないんですかぁ〜?」
語尾を伸ばす、甘ったるい喋り方にイライラが増してく。
「それは、…こうだから…」
嫌な顔ひとつせず、律儀に説明する漣を見て、みんなは、よくやるなぁ〜と見ていた。
「なるほどぉ〜!ありがとうございますぅ〜!」
やっと理解したのか、有坂さんは可愛こぶりながらそう言った。
「いつでも聞いてね。」
連はいつもの笑顔を見せながら、優しく言う。
鼻の下伸ばしちゃって…
どうせ、私は胸ないし、そんなにぶりっ子も出来ない。
だけど、その笑顔で話しているのを見ていると、なんだか、モヤモヤした気持ちになった。
「有坂さん、すごいよね。
私にはあんな真似できないわぁ…」
梓が隣から言う。
確かに…と、私も思う。
有坂さんは漣に対してしか、あのぶりっ子はしていない。
他の人には塩対応だ。
とくに、私たち女はだいぶ敵視されている。
「さぁ、仕事しよ。」
有坂さんが自分のデスクに戻ったので、注目していた人達も仕事に戻る。
ちらっと漣を見ると、さっきの笑顔のまま目が合った。
“ん?どうしたの?”そう言われている様な顔をしたので、まだイライラが収まっていない私はぷいっとそっぽを向いて、仕事に戻った。