その笑顔、私のモノ
chapter2
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何とか1日の仕事が終わって、家に帰る。
職場から、電車で10分くらいの距離の所のマンションに住んでいる。
鍵をさして、ガチャっと開けると、美味しそうな匂いがしてきた。
「ただいま。」
入って、正面にあるドアを開ける。
「彩子ちゃん、おかえり〜!」
満面の笑顔で鍋を掻き回しながらそう言ってきたのは、漣だ。
私は漣と同棲している。
同じ職場なのにどうして、漣のほうが帰るのが早いのかと言うと…
漣は車通勤で、私は電車と歩きだから。
もちろん、一緒に住んでいるのに、一緒に行かないのは出勤した時にバレないようにするため。
時間も少しずらしている。
あともう1つ、漣がご飯を作っていたのは…漣の方が早く帰れるのもあるけど、漣が作った方が美味しいから…。
「もうすぐできるよ。座ってて〜」
鼻歌混じりで、テンションの高い漣。
まぁ、いつもなんだけど…
放っておいて、椅子に深く腰かける。
はぁ…
疲れた…
そして、すぐ目の前にお皿が置かれた。
「今日はシチューだよ〜」
盛り付けも上手で、より美味しそうに見える。
「ありがと、いただきます。」
思わず目を輝かせながら言うと間を置かずに、漣も「めしあがれ〜」とニコニコしながら言った。
「お、おいしい!」
1口食べて出た、自然な感想に漣は嬉しそうな顔をしながら2人でご飯を食べ始めた。