その笑顔、私のモノ
相変わらず、悔しいくらいに美味しい。
食べてる時も、漣はニコニコしながら私を見てくる。
視線がうるさい…
「ごちそうさま。」
食べ終わった私は、漣の視線から逃げるように立ち上がり、サッと食器を食洗機にセットしてお風呂に向かった。
…忘れてるわけじゃないんだよ…
昼間呼ばれたときに、“家帰ってからならいいよ”って言ったことは覚えてる。
だけど、楽しみそうにずっと笑顔を見せられたら誰だって、思わず逃げると思う。
それに、私は漣が有坂さんと話していた時の事を考えないようにしていただけで、モヤモヤは残ったままになっていた。
湯船に浸かりながら、頭の中を整理する。
たぶん、逃げるようにお風呂に入った私を見た漣はびっくりしているだろう…
いつもなら、そのままテレビを見たり、のんびりデザートを食べたりしているから…。
今更ながら、どうしてあんなことを言ってしまったのか、と後悔が強くなる。