異世界ピエロに恋した私。
「ふらめんこ?
何でしょうそれは!?」

頬の次は両手を掴む女性、しかも何気に力強い。
この世界はフラメンコを知らないのだろうか、そんな疑問を抱きながらも簡単に説明をする。

「踊りの1種です。
派手な衣装を身にまとって、カスタネットや足で音を鳴らして踊るんです」

「かすたねっと?
よくわからないのもあるけれど凄そうね!
ぜひ見せて欲しいわ!」

見せて欲しいと言われたものの、もう3年もフラメンコは踊っていないし、何より今ここに衣装がない。
自分が今着ているのは普通の黒のスーツだ。
何とかなるだろうかと不安になりながらスーツを見つめると、女性が声を上げた。

「貴方もしかして衣装がないの?」

「...申し訳ないです」

「なるほど〜、派手な衣装ならいいのよね?」

頷くと、女性は優しい笑みで私を見つめ、手を掴んだまま引っ張り始めた。
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