異世界ピエロに恋した私。

大きな舌打ちも拍手の音でかき消される、何事も無かったかのように。
生憎マグナスは俺には気づいておらず、こちらに目線を向けない。

「只今の時刻14時ですね!
皆さんお待ちかねの、お披露目ショーの始まりです!
後の司会者は、このキャリル・ノーンにお任せします!」

舞台の幕の裏から出てきたのは、これまたメイドと同様、年老いた男。
俺は知っているこの男も。

『キャリル、マグナス1番の部下だ』

手に力が入るのがわかる。
今手の中にあるグラスを割ってしまう、そんな気がして深呼吸をし心を落ち着かせる。
ここで大きな音を立ててしまうと、奴らに気づかれてしまう、咄嗟に思ったのだ。
そっと顔を隠すようにして帽子を深く被り直す。