異世界ピエロに恋した私。
雑音も消え、再び静寂となった空気を破ったのは司会者のノーンだった。

「えー...彼女は少しばかり体調が悪いみたいですね〜!
これは1度引き下がってもらい、次のショーの方に出てきてもらいましょうか!」

『でたよ、ゴミを見るような目付き』

ノーンはクリスに近づいていき、枝のように細い腕を掴んだ。
そこで我に戻ったのか、彼女は首を大きく左右に振り乱した。

「い、今のは少し手が滑ってしまい...!
もう一度チャンスを下さい!」

一生懸命頭を下げているが、奴にそれは通用しないだろう。
何せ、今彼女の目の前にいるのは...。

「チャンスなんてないです」

魔王の手下に値する、悪魔なのだから。
< 62 / 72 >

この作品をシェア

pagetop