ずっと前から好きだから
「匠、お疲れ様」


「おう、さんきゅ」



試合後、選手たちがでてくるところの前で、匠にスポーツドリンクを渡す。
昨日のことはもう口にはださない。



「匠、頑張ってたね」


「まぁ、負けたけどな」



タオルで汗を拭きながら、へへっと笑う。



「でも、匠の頑張りは伝わったよ」


「なら、よかった」



あたし達の応援が変わったあと、うちの高校は追い上げたけど、一歩及ばず。
1回戦敗退になってしまった。



「負けたけど、かっこよかったから。今度はちゃんと見たんだよ」


「お前なー、見るならこの前の勝った試合にしとけよな」



匠がペットボトルでポンっとあたしの頭を叩く。

匠もすっかりいつも通りで、気まずくならなくてよかったって思う。



「あ、そうだたく「詩音!」



匠に帰ったあとの夕食のリクエストをきこうと、腕に触れた瞬間、スっとその腕は外されて、彼はあたしの言葉を遮っていなくなった。



「.......っ」



まただ。
詩音さんが現れたことによって、またあたしの存在は匠の中からなくなる。

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