ずっと前から好きだから
「あれ?匠は?」


「あそこ.......」



トイレから戻ってきたこころちゃんが、あたしの指をさした方向をみる。



「あ、昨日の.......」


「詩音さん見つけた瞬間、あたしの存在なんてなかったようにあっち行っちゃった」



我慢していた涙は、それを口にした瞬間に流れてくる。



「夏実ー、泣かないで.......あ、ほら柊がでてきたよ」



こころちゃんの言葉に出入口をみると、タオルで頭を拭きながらでてくる柊くん。



「渡してくるね」



匠と同じスポーツドリンクを用意していたあたしは、目をこすって、柊くんの元へと走る。



「柊くん!」



はいっと、スポーツドリンクを柊くんへと差し出す。



「えっと.......貰うような理由ないんだけど」



そう口にする柊くんは、いままでとは全然違って別人のようで。



「え、柊くん?」


「とりあえずもらっておくよ、ありがと.......あっ!」



あたしからペットボトルを受け取ったあと、何かに気がついてそのまま走っていく。

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