ずっと前から好きだから
そんなの分かってるのに、なぜだか心にポッカリ穴が空いた気がしてる。



「あたしは、誰かの一番になりたいのかな」



そんなつもり全然なかった。
でも、いまあたしが好きだと思ってる匠だけじゃなく、柊くんのことだってショックだったんだ。



「柊くん、あたしのこと好きって言ってくれたのに.......」



さっきの柊くんのあたしに対する態度はそんなんじゃなかった。
きっと、何かの間違えで柊くんは「好きだ」と言ってしまったのだろう。

そう考えたら、なんだか悲しくて仕方がなかった。

ふたりして、あたしにキスしといて、あたしのこと好きじゃないとか。
あたしなんなの?
笑えてくるよね。



「あれ.......ここどこだろ.......」



気がつくと、振り向いても甲子園球場が見えなかった。
無心で歩いているうちに、遠くまで歩いていたらしい。



「え、もう!?」



時計をみると、球場をバスが出る時間になろうとしていた。



「やばい、置いてかれちゃう!」



こころちゃんにLINEをしようと、ポケットからスマホを出すと、なぜだか切れてる電源。



「あぁ.......昨日あまりのショックに充電もし忘れたんだった.......」



どこだか分からないことに不安を感じて、とりあえず近くの公園のベンチに腰をかける。



「これからどうしよう.......」

< 138 / 192 >

この作品をシェア

pagetop