ずっと前から好きだから
「.......ごめん、そんなつもりではなかったんだけど」


「うん。それもわかってる。これは、あたしの個人的な問題だから.......気持ちの整理がついたら戻るから」



まずは、消さないと。
あたしの中から匠への気持ちを。



「気持ちの整理ってなんだよ」


「.......気持ちは気持ちだよ」


「だから、誰のなんの気持ちだよ!」



要点の得ないあたしの言葉に、匠がイライラしているのがわかる。



「匠には関係のないことだよ」



あたしの気持ちなんて、匠には関係ないじゃないか。
気持ちを言ったところで、匠の詩音さんへの気持ちがなくなるわけじゃない。



「.......んで、関係ねぇとかいうんだよ」


「.......っ」



匠の表情がとても傷ついたものになっていて、あたしは言葉を返せなかった。

どうして、そんな顔をするのだろう。
あたしの気持ちなんて、どうでもいいくせに。
期待させるような顔、しないでよ。



「頼むから、関係ねぇとか言うなよ.......」


「匠.......」


「俺から、離れるなって.......」



いつになく弱々しくなった匠があたしを自分の胸へと引き寄せる。

< 145 / 192 >

この作品をシェア

pagetop