ずっと前から好きだから
「にーちゃん」


「そんな大声出してどーしたんだよー」



俺の兄貴の架(かける)だった。



「かけるくん!」



兄貴がくると、詩音の意識は全部兄貴に持ってかれる。
この頃の詩音は、俺らより少し年上で、頼りがいのある兄貴のことが大好きだった。

それが悔しくて、俺も兄貴のようになりたいと、詩音を守るなんて子供ながらに思っていた。



「なんだ、たくみくんのかたおもいなんだ」


「あぁ!?」



そんなの自分でも分かっていたけど、こいつにだけは言われたくなかった。



「たーくみ。女の子にそんなふうに言っちゃダメだよ」



いまにも、竜崎のことを殴ってしまいそうな勢いだった俺の肩をつかんだ。



「でも、おれ.......」


「ほら、もうすぐ暗くなるから帰ろう。君もお家に帰るんだよ」



ポンっと竜崎の頭を撫でる。



「かけるくん、きょうはがっこうでなにしてたのー?」



兄貴がきてからずっと楽しそうにニコニコしている詩音。
こんなのいつものことだ。

でも、それに気がついて、嬉しそうにしてる竜崎が嫌で仕方なかった。

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