ずっと前から好きだから
「ただいま」


「わぁー、匠おかえり!あ!うまくいったんだね!」



詩音とふたり、手を繋いで帰ると出迎えてくれた夏実が俺たちをみて、目を輝かせていた。



「すいません、おじさん」


「いいや、いいんだよ。ありがとう、匠」



詩音の顔がスッキリしているのを、おじさんも感じたんだろう。
俺に頭を下げてくる。



「やめてくださいよ。で、どうします?」



まだ夏実は自分のことを詩音だと思ってるだろう。
でも、俺はもう詩音のことを夏実だなんて呼びたくない。
夏実のことも詩音だなんて、もう呼べない。

詩音に会えなかった頃は、夏実に対して詩音と呼べることが嬉しくて、恋心に似たものを夏実に対して感じていた。

でも、それはただの詩音の代わりであって、全然違うと思ったのは、詩音に再会したとき。

やっぱり、俺が好きなのはコイツだって思い知らされた。



「ね、あたしなんでここに呼ばれたの?」



不思議そうに夏実が聞いてくる。



「もう、いままでみたいに詩音って呼んであげられない」


「.......へ?」



俺の言葉にキョトンとした顔になる夏実。

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