ずっと前から好きだから
人に何かを作ってあげたりとか、彼氏もいたことがないからしたことなかったし。
初めて手料理を食べさせるのが匠ってことがなんだか癪だけど。



「ていうか、ちゃんと乾かしなよ。風邪ひくよ?」



匠の肩にぶら下がってるタオルを奪って、頭に乗せる。



「だって、腹減ってんだもん」


「もう、ばか!食べさせないからね?」



このままじゃ、埒が明かないなと思ったあたしは、バスルームへ向かってかかっているドライヤーを手に取る。

見えた、シャンプードレッサーに備えられた2本の色違いの歯ブラシ。
共有している、歯磨き粉にドライヤー。



「……なんだろ」



匠とここで暮らし始めて、もう既に2週間。
いちどもこんなきもちになってなかったのに。
きゅうにふわふわした気持ちになっている。

歯ブラシだってなんだって、毎日朝晩と見るものなのに。
どうして、急にこんな気持ちになっているのか、全然わからなかった。



「おい、こんなとこで何してんだよ?」



帰ってこない、あたしを気にしてかこちらに歩いてくる音が聞こえる。

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