ずっと前から好きだから
「なんだ、ドキドキしてないの?」



なんだ、なんて言いつつ、笑みは変わってない。
コイツは分かってるんだ。



「初めてなんだから……」


「え?」


「初めてのキス、ドキドキしない方がおかしいでしょ!匠は慣れてるのかもしれないけど……」



初めてのキスをこんな経験で失って、その相手は平然としてて、なんだか悔しくて悔しくてたまらなくて。
涙が溢れてくる。



「お、おい。泣くなよ」



慌てたように、あたしの涙を匠の手で拭う。



「しょうがないでしょ……」


「ドキドキ、しないわけねーだろ」


「え?」



匠の言葉に彼を見上げれば、頬が赤く染まってた。



「カッコつけたくて、平然としてるフリしてるだけで、お前とのキス……ドキドキしないわけねーよ」



そのまますっぽりと匠の腕に包まれる。



「匠……」


「正直、夏実が初めてだとも思ってなかったし……って、ずっと柊のこと好きだったんだもんな。考えてみたら当たり前なのか」



あたしのことをギュッと抱きしめながら、そっと呟く。

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