ずっと前から好きだから
「好きなのは.......」



匠なのに。

こんな気持ち、自分でも戸惑ってる。
あたしは、ずっと柊くんのことがすきだと思っていた。
柊くん以外の人を好きになることなんて、ないと思っていた。



──なっちゃん!
柊くんのその呼び方が大好きだった。



──夏実!
柊くんとは、まったくちがう。
いっつも自信にみちあふれてて、俺様で。
でも、本当は弱い自分を抱えていて。
そんな匠に恋をした。



「あーあ」



好きだと思えば、匠は離れていく。
ずっとあたしに言っていた言葉は冗談だというんだ。

あたしだって、匠に好かれている自信なんてない。
でも、あれだけの言葉を浴びせられたら、勘違いするのも仕方ないと思うんだ。

柊くんは、あたしのことを好きだと言ってくれた。
どうして、もっとはやく言ってくれなかったのか。
彼女がいなかったら、あたしの気持ちは変わってなかったのかもしれない。


.......ううん。
いや、違うかもしれない。

柊くんのことを、本当に好きだったのかすらわからない。

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