ずっと前から好きだから
その隙に、彼女の前から逃れると、ガシッと強い力で引き寄せられる。



「.......匠」


「大丈夫?」


「うん、どうしてここに.......?」



匠は、練習着姿でどこからどうみても部活中だ。



「ランニングしてたんだよ。そしたら声が聞こえて.......みてみたらフェンスに追いやられてるの夏実だし」


「.......ありがとう」



誰かの助けなんて、無理だと思ってた。
でも、こうして来てくれたのは、いますきだと思っている人で。

その事実に胸の奥がじんわりと暖かくなる。



「陽葵」



あたしの頭をポンっと叩いてから、彼女に向き直る。



「なによ」



それでも、なお鋭い目付きでこちらを見ている。




「こいつを恨むのは間違ってる。柊に好かれる努力を怠ったのはお前だろ」


「.......そ、そんなこと「お前は、柊と付き合って、夏実のことを好きだったあいつの気持ちをものにした気がして油断してたんだ。あいつは、夏実のことずっと好きだったよ。俺が知ってる」

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