ずっと前から好きだから
「.......っ」



匠の言葉にだんだん顔が歪んでいく。



「恨むなら柊の彼女っていう立場に甘んじてた自分を恨め。こいつを恨むのは間違ってる。行くぞ」



彼女を一蹴して、そのままあたしの腕を掴んで歩き出す。



「匠.......」


「ん」


「.......ありがと」



あたしの手を握って、前を歩く匠の背中は、気づけばあの頃とは違って随分と自分よりも大きかった。



「大丈夫か?」



少し歩いて、木陰にたどり着くと匠があたしをみる。



「.......うん。匠が来てくれたから」


「なんか、お前随分と素直だな?」


「.......もう、本当にありがとうって思ってるの」



なんだろう。
いままでとはなにかが違う気がする。

目の前に匠がいるだけで、ふわふわする。



「あっれー?匠いなくなったと思ったら彼女と一緒かよ」



ガサッと音がしたとおもったら、野球部の誰かがランニング中に匠を見かけたのだろう、近づいてくる姿が見える。

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