ずっと前から好きだから
「うるせーよ。いいかられんしゅ.......」



匠の言葉が途中で途切れたので、不思議に思って声のする方向にあたしも顔を向ける。



「.......柊」



匠の言葉のとおり、声をかけてきた野球部員の後ろには柊くんが立っていた。



「は?彼女.......?」


「なに、お前知らねーの?学校中の噂じゃん。あー、お前中学の頃もそうだったっけ?野球バカだった」



彼は中学から2人と同じなんだろう。
そして、匠の言う通り、柊くんはそういうことに疎いらしい。



「.......そっか」



力なく笑って、その場を去ろうとする柊くん。



「しゅ、柊!違うんだ、これは!」



そんな柊くんを追いかけて、彼の肩を掴む匠。
あたしはそんな匠とは対照的に、その場から動くことさえ出来ない。



「ごめんな、匠」



追いかけてきた匠の手をそっと肩から外し、そう言い残して、そのまま歩いていった。



「お、お前!行けよ!柊のこと、追いかけろ!」


「.......え」



あたしは、追いかける権利なんてないはずなので、匠の言葉に戸惑ってしまう。
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