ずっと前から好きだから
「なんで逸らすんだよ、そんなに俺が近づくの嫌かよ」


「.......なっ、誰もそんなこと言ってないよ」



匠にも少しは乙女心というものをわかって欲しい。



「だっていつも逸らすじゃん、近づくと」


「そんなの、仕方ないよ.......」



好きだって気づく前からずっとドキドキして仕方なかった。
あの時にはもう好きだったのかもしれない。



「なんだよ、仕方ないってなにがだよ」



それでもなお、あたしの顎を持ち上げて、自分へと向かせる。



「ドキ、ドキしちゃうから.......」


「.......っ」



自分から聞いてきたくせに、あたしのセリフに一瞬目を見開いて、そして、匠の頬がほんのりと赤くなっていく気がする。



「お、お前.......なに急に言ってんだ、バカ」



口は悪いけど、目の前の好きな人があたしの言葉に照れている様子がみえる。



「聞いてきたのは、匠でしょ?」



なんだか嬉しくなって、今度はあたしが匠の顔を覗き込む。

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