100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
着崩した学ランの下にはトレーナーを着ていて、上履きはだらしなく履き潰している。
サラサラと揺れる髪の毛はほんのりと茶色くて、右耳にはキラリと光るピアスがひとつ。
細身だけどタッパがあり、彼は学校のどこにいても目立つ。それでいてひとりでいるところを見たことがないほど、いつも大勢の友達と一緒にいる。
佐原と目が合ったけれど私は挨拶をし返すこともなく、再び裏庭の景色に視線を戻した。
「おいおい、シカトかよ」
シカトされていると分かっているのに、佐原は私の隣にやってきた。同時にふわりと甘い匂いがして私は目を細める。
嗅覚は鮮明に記憶を連れてくる。この匂いはあの日も嗅いだ。
頭が妙にクラクラしたのはこの甘い匂いだけが原因じゃなく、佐原が異常なほど優しかったから。
そんなことまで、一瞬で思い出してしまった。
「授業サボり?教科なに?」
「………」
「つーかここ寒くね?中に入ろうぜ。サボれるところなら他に知ってる――」
「なんか用なの?」
佐原の声を遮って私はため息をはいた。
「これから会話のキャッチボールしようとしてんのに露骨に拒否んなよ」
佐原は誰にでもこう。
いつも軽口ばっかりでチャラチャラしている。女の子たちの扱いにも慣れていそうだし、上級生からも『悠真ー』って、猫なで声で話しかけられているのを見かける。