100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
「……あ」
お互いの指が鍵盤から離れて演奏が止まった。
俺がミスした。そして海月もミスした。
急に静かになってしまった音楽室と、いい感じだったのに同じところで間違えてしまったことが、なんだかとても可笑しくて。
「はは」
俺は声を出して笑う。
今は笑っておこう。笑い飛ばしてしまおう。
頭に浮かんだ不安も、ぜんぶ。
「もう一回やろう。次は上手くいく」
何度振り出しに戻っても、またやり直せばいい。
海月は小さく頷いて、再び鍵盤に手を添えた。
その横顔が綺麗で、どうにもこうにも、やっぱりすげえ綺麗で。
鍵盤を弾くたびに当たりそうになる肩も、触れ合えそうで触れ合えない指先も。
まだ認めないと、頑なに考えないようにしてたことが、どうでもよくなる。
海月がなにを抱えていても、なにを背負っていても、この先なにがあっても、変わらない。
俺は、海月が好きだ。