100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
だから、だから、私はちょうどいいと思ったんだ。
遊んでる人だから、どうせ上っ調子のバカだから、軽く受け入れてくれるだろうと。
『なんか誘われて一晩一緒に過ごしたんだよね』って、友達に言いながら私のことを笑ってくれたら良かったのに、佐原はあの日のことを誰にも言わない。
それどころかなんにもなかったかのように、こうして私を見かければ声をかけてくる。
「海月って色白いよな。白さを通り越して透明って感じ?」
「……名前で呼んでいいなんて言った?」
「前に呼んでいい?って聞いたらなにも言わなかったじゃん。俺、無言はイエスって意味だと思ってるから」
やっぱり佐原はバカだ。けれど、チャラついていても遊び人じゃなかったことはもう知っている。
「忘れてくれない?あの日のこと」
もう一度言う。佐原を誘ったのは遊んでいる人だと思ったから。
――『ねえ、朝まで一緒にいてよ』
そう言って誘ったあと駅前のホテルに入って、雨で濡れた身体なんて関係なくベッドに入った。
過去になんとなく言い寄られて付き合った人はいたし、人並みには経験していた。
こんな風に別に親しくもない佐原を押し倒して、むしゃくしゃしていた気持ちをどうにか沈めようとしていた自分自身に驚きながらも、これしか方法がなかった。
どんなに考えても、私はこの夜をひとりで越える自信がなかったんだ。