100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
もちろん美波と同じタイミングで家を出ても学校に向かう足取りは別々。私の遥か前方を歩く美波の後ろ姿を確認しつつ、スマホが振動した気がしてポケットから取り出すと佐原からメッセージが届いていた。
【おはよう。今日一緒に昼飯食わない?学食のカレーうどんがすげー旨いんだけど食ったことある?】
私が楽しみなことなんてないと言ったから、佐原はあの言葉どおり予定を立てようとしてくれてる。
あの時はただただ魚たちに癒されて、心が解れて、あんな風になにも考えずに休日を過ごしたのはいつ以来だろうってぐらい。
だから、気が緩んだ。
緩んでしまったから、つい弱いことを言ってしまった。
私は佐原にメッセージの返事をしようとしたけれど、どうにも動かない指先を扱うことができずに、再びスマホを閉まってしまった。
それから学校に着いて、机から教科書を出すのも一苦労。
今のところ痺れは手だけで他の箇所は正常だけど、もし症状が足に出てしまったら……私はまともに歩くことはできないと思う。
じわじわと侵食してくる病魔に、恐怖を感じてる。自分なんてどうでもよかったはずなのに――。
『じゃあ、俺は海月が溶けた海になるよ』
優しいよりも、甘すぎるきみに。暖かいよりも、熱すぎるきみに、そんなことを言われたせいで、ほんの少し。
本当に少しだけ、迫りくる期限の短さに泣きたくなる。