100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ



「なあ、海月の席ってここだろ」

俺は五列目の前から三番目の席を指さした。「俺はここ」と、座った席は海月の隣。


「もし同じクラスだったら俺たち隣同士だったかもな」

そう言うと、海月は同じように自分の席へと腰を下ろした。


幾度となくそうだったら良かったなと妄想していたことが実現して、本当にこんな風に海月が隣だったら俺は授業中に居眠りなんてしない。むしろ気持ち悪いぐらい海月の横顔ばかりを見てしまうと思う。


「教室で佐原といるのって変な感じがする」 

海月は少し恥ずかしそうに垂れ下がる髪の毛を左耳にかけた。


「同じクラスじゃないと見れないものっていっぱいあるよな」

「……?」


「おはようって教室に入ってくるとこ。出席で名前呼ばれてるとこ。授業を受けてるとこ。黒板の字をノートに写してるとこ。当てられて答えてるとこ。真剣にテストをやってるとこ。ばいばいって、教室を出ていくとこ。全部クラスメイトじゃなきゃ、見れないじゃん」


考えてみれば同級生は約180人くらいいるわけだし、その中で同じクラスになれる数は大体30人前後。

毎年クラス替えをしたって、チャンスはあと二回しかないし、好きな人とクラスメイトになるってけっこう難しい確率だと最近気づいた。



「来年は見たい。海月と、同じクラスになりたい」


躊躇することなく、俺は来年という言葉を使った。

< 186 / 264 >

この作品をシェア

pagetop