100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ




海月がいない未来なんて想像できないし、したくない。

これは現実逃避でもなんでもなくて、俺は海月と二年生になるつもりでいるし、桜が舞う昇降口の玄関でクラス表を一緒に確かめたいと思ってる。


海月は「そうだね」と言ってはくれなかった。

代わりに夜空に浮かぶ満月を見つめながら、物思いにふけるように遠い瞳をする。



「……私、入学式の時から佐原のこと知ってた。目立ってたから。金髪で」


今では茶髪に落ち着いてる俺も、以前は上級生になめられないようにと、かなり色を抜いていた。

そのせいで入学早々ヤンキーに呼び出されたりしたけど、得意の話術で上手く取り入って争いになるどころか逆に可愛がられた。だから調子に乗った。入学したての頃は自分でもバカなほど粋がっていたと思う。



「大勢の友達引き連れて、女子からもちやほやされてて。わざと大きい声を出して騒いでたり、廊下の邪魔なところに座ってたり。適当でチャラチャラしてて、絶対にこの先関わることなんてないだろうなって思ってた」


俺も、海月とこんな関係になってることが今でも不思議だ。

俺は入学式の海月の姿を覚えていないし、その存在を知ったのは入学してからだいぶ月日が経過した頃だった。

そのぐらい、俺たちは交わらない場所にいた。



――『ねえ、朝まで一緒にいてよ』 


あの瞬間までは。


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