100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
「海月は、なんであの夜に雨の中をフラフラしてたの?もしかして病院帰りだった?」
「……あの日に宣告されたの。あなたの余命は三か月だと思ってくださいって」
ドクンと、俺の心臓が悲しい音をたてる。
「死ぬことに対して別に怖さはなかったし、病気だって分かっても、まあ、長生きしたいわけじゃなかったしって、その程度。でも、頭で考えてることと心で思うことは別々で……」
海月の声がだんだんと小さくなった。そして……。
「今でも後悔してる。あんな形で佐原を巻き込んでホテルに行ったこと」
月明かりに照らされた海月がまっすぐに俺のことを見ていた。
「あの時は、もうなんだっていいやと開き直ってる自分と、なんで私ばっかりって腹が立ってる自分とふたつの感情があった。そんな時に佐原から声をかけられて、その優しさに私は寄りかかったんだと思う」
あの時の俺たちはお互いのことなんてなにも知らなかった。
色々なことを飛び越えてしてしまったことはあるけれど、あの夜がなかったら、俺たちは今一緒にはいないだろう。
「じゃあ、良かった。声をかけて」
「え……?」
「だって海月を見失わずに済んだ」