100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
寄りかかってきてくれた海月を少しでも受け止めることができていたのなら。
一瞬でも心の救いになっていたのなら、俺は何度あの日に戻っても海月に傘を傾けるし、夜を一緒に過ごすことを選ぶ。
「巻き込んだ、なんて言うけど、巻き込まれてよかったんだよ。俺は海月と関わることができて、好きになって良かったって思ってるし、海月のことだけは、後悔しない」
絶対に、なにひとつこれからも後悔することは一度だってないと言い切れる。
だから、海月もそうであってほしいと思う。
「……佐原」
海月が泣きそうな顔をしたので、その顔に触れようと手を伸ばした。
でも次の瞬間、廊下から懐中電灯の光りが見えて俺は慌てて海月の身体ごと机の下に隠れた。
「な、なに?」
「しっ」
光りは教室の中へと入ってきて、確認するように左右に揺れる。おそらく学校の警備員だと思う。
夜に見回りしてる人がいることは噂で聞いたことがあったけど、まさか本当にいるとは思ってなかった。
足音とともに懐中電灯が俺たちの側まで来たけれどなんとかバレずに済んで警備員は教室を出ていった。
「っあぶねー」
俺はふう、と胸を撫で下ろす。「見つからなくてよかったな」と、海月に話しかけたけど、何故かうつ向いたままなにも言わない。
「ど、どうした?どこか痛い?」
狭い机の下に無理やり押し込んでしまったし、俺はなんとか海月だけでも隠そうと、覆い被さるようにして身体を丸めた体勢だった。
「痛くない。びっくりしただけ……」
目が合ってその距離の近さに今さら動揺する。
「ご、ごめんっ」と、慌てて机から出ようとしたらガンッ!と思いきり頭をぶつけて俺は悶えるようにして前頭部を手で押さえた。