100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
「大丈夫?」
海月は細くて小さいから、俺と違ってすんなりと外に出てきた。
「平気、平気」
ってか、動揺して頭ぶつけるとかマジでカッコ悪すぎる……。
「ちょっと見せて」
海月は背伸びをして、俺がぶつけた箇所を触った。髪の毛をかき分けるようにして海月の柔らかい指が侵入してくる。
「あ、少しぼこっとしてる」
たんこぶを発見した海月は心配そうに撫でてくれたけれど、俺の心臓が持たないので、「本当に大丈夫だから」と、自分から離れた。
警備員が来た時よりも、もっと鼓動が速くなってる俺の様子に、海月はたぶん気づいていた。
……男なのに情けないって、思われてなきゃいいけど。
「やっぱり写真、一枚だけならいいよ」
「え?」
海月がおもむろにそんなことを言った。
「でも私だけが撮られるんじゃなくて、佐原とふたりで。それで同じものをあとで私にも送って」
残ることが嫌だと言った海月。でも少なからず今は……残ってもいいと思ってくれた。
写真は俺のスマホで撮った。
満月を背景にして、本当に一枚だけ。撮り慣れていない海月が俺の隣で微笑んでくれていて。
それがどうしようもなく、愛しかった。