100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
「いってきます」
洗面所で身支度を整えたあと、私は誰よりも先に家を出た。
……はあ。空に吐いた息は冷たい風の中に消えていく。
カレンダーが10月になってからずいぶんと気温が下がり、寒がりな私はもうポケットにカイロを入れている。
高校に入学して変わったことといえば、髪の毛を伸ばすようになったことと、体重が二キロ減ったことと、異常なまでに静電気が発生するようになったことと、まだまだある。
変わったと、自分で認めればいくらだって。
「116円になります」
立ち寄ったコンビニで300mlのホットレモンを買うのが最近の日課。
手軽にレモン2個分のビタミンCが補給できるとラベルに書いてあるけど、身体が暖まればなんだっていい。
私はお財布から小銭を出してトレーに乗せる。最初は袋の有無を尋ねられたけど、対応してくれる店員はいつも同じだから最近は聞かれなくなった。
「あ、あの、いつも買いに来ますよね!旨いですよね!ホットレモン」
「………」
「えっと、その」
名前、年齢、学校。聞かれることはいつも同じ。
私は興味がないというのに、興味を持たれる。こんなにも無愛想で、もらったレシートをぐちゃぐちゃに丸めて捨てるぐらい気遣いがない女なのに。