100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
――キーンコーンカーンコーン。
教室にチャイムが鳴り響くと、騒がしかった生徒たちの声が止み、みんな一斉に自分の席へと移動する。
「じゃあ、出席とるぞ。安西、伊東、上野」
次々と名前が呼ばれていく中で、私は頬杖をつきながら外の景色をぼんやりと見つめていた。
くるくると、北風に乗って枯れ葉が舞っている。
……たしか今日は体育があるんだっけ。しかもマラソン大会に向けての練習。
どうやってサボろうかな。保健室の先生は嘘に目ざといし、屋上は柵が壊れたからと、二学期からは出入り禁止になってしまった。と、なると……。
「岸」
名前を呼ばれて返事をしかけると、先生は慌てて「すまん、美波のほう」と訂正し、「あはは、もう。このパターン何回目ですか?」と、美波が笑う。
静かだった教室が一気に明るいものになり、次に名前を呼ばれる私にとって返事がしにくい空気になってる。
「はい。じゃあ、岸。次は海月のほうな」
なんだか勘に障る言い方。
「……はい」と、小さな声で答えると、「聞こえねーし。お化けみたい」とどこからか野次が聞こえ、美波を含む女子たちがクスクスと笑った。