100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
図書室の壁時計は入り口付近にあるのに、秒針の音が聞こえてくるぐらい私たちは無言だった。
いつもペラペラと喋る佐原はまだ機嫌を損ねたままなのか、なにも話そうとはしない。
「……ねえ、あんたって彼女とかいないの?」
沈黙に耐えられずに話を振ったのは私のほう。
「俺にそれ聞く?こんなに散々アピールしてる……」
「いないの?」
「いねーよ」
佐原の言葉を遮ってまで尋ねた追及に、ますます佐原は機嫌が悪くなってしまった。
「前はいたよね。それらしき人と一緒にいるところ見たことあるし、今だって女の子に困ってないでしょ?」
……私、なにを言ってるんだ。こんなに喋ることなんてないのに、自分じゃないみたいに口が勝手に動く。
「私なんかに構ってないで早く彼女でも作りなよ」
そう、私はこれが言いたかった。
きっと佐原が私に話しかけてくるのは周りにいる派手な女子とは違うタイプだからで。いつも同じ味のものを食べていると飽きてくるみたいに、私のことも珍しいから気にかけているだけ。
だから、佐原に彼女でもできたら落ち着くのになって。
前みたいに廊下ですれ違っても、話せる距離にいてもなにもない。そんなただの同級生に戻れたら……。
「なあ、俺と友達にならない?」
え……と、戸惑う声も出なかった。
瞳の瞬きが高速で動く。誰かの言葉でこんなにも固まってしまったのは初めてかもしれない。