100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
「私の話、聞いてた?」
「聞いてたよ。で、海月と友達から始めたらいいんじゃねえかって」
「なに言ってるの?始めないよ、そんなの」
「あーあ、分かった。そうだよ。俺はお前に聞くのをやめたんだった。だから、今から俺と海月は友達。拒否権はありません」
頭がクラッとした。
友達になるとか、バカじゃないの。
なったって私の期限は決まってる。
私となにかを始めようとするなんて、そんなのなんの意味もないことなのに。
「じゃあ、とりあえず暗くなる前に一緒に帰ろうぜ」
佐原がおもむろに腰を上げた。
たしかにもうすぐ部活動も終わるし、図書の先生が鍵をかけにくる時間。でも一緒に帰る理由はない。
「いい、ひとりで帰る」
また突拍子もないことを言われる前に、早く。
カバンを肩にかけて立ち上がったところで、佐原は引き止めるように私の腕を掴んだ。
「友達なんだから、一緒に帰るんだよ」
なにそれ、ズルい。友達って言えばなんでもまかり通ると思ってない?そもそも友達になることも許可した覚えはないのに。
結局、私たちは一緒に校舎を出た。正確には佐原がついてきた。
最初は私のほうが速く歩いていたのに、あっという間に追い付いてきて。その肩が綺麗に並びそうになったところで、私は速度を落として一歩下がる。
私があえてスピードを遅くしたこと。一緒に並ばないようにしてることに、佐原はなにも言わなかった。
私の話は聞かないとか、友達になろうとか、強引なところがあるくせに、そういうところはうまく知らん顔をする。
別に並びたくないわけじゃなかった。
でも、並ばないことで少しはこの状況に抗ってるつもりになって。これ以上、心に踏み込まれないよう必死に虚勢を張っていることに……。
どうか、佐原が気づきませんように。