100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
「ごめん。私、帰るから」
そう言って布団から出る海月を、俺は腕で制止した。
「帰らせねーよ」
「……え」
一瞬だけ部屋が沈黙になり、本を隠すよりもこっちの言葉のほうが誤解を生みそうだと慌てて付け加えた。
「い、いや、俺がってことじゃなくて目眩で倒れたって言ったら、下で張り切ってる人がいて……」
「どういう意味……」
海月が言いかけたところで、タイミングよく部屋のドアが開いた。
「あら、よかった!目を覚ましたのね!気分はどう?」
それはエプロン姿の母さんだった。
「ノックぐらいしろよな」
「だって話し声が聞こえたのよ。あんたが寝起き早々に変なことをしてないか見にきたんじゃないの」
「息子をもっと信用しろよ」
普段どおりの会話をしてる俺たちを海月は戸惑った顔で見ていた。
「えっと、俺の母さん」
こんな形で海月に親を紹介するのは不思議な感じがする。海月は少しだけ姿勢を伸ばして小さく会釈をした。