100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
そして晩ごはんが食べ終わり、俺は海月を送るために上着を羽織って玄関のドアを開けた。
「海月ちゃん、また来てね」
食事中、海月は俺たちの会話を聞いているだけで自分から話したりはしなかったけど、皿洗いも自分のぶんぐらいは洗わせてほしいと台所に立ち、そういう細かい気遣いができる海月を母さんはすっかり気に入ってしまったようだ。
「ありがとうございます。お邪魔しました」
海月は丁寧に頭を下げて、俺と一緒に外に出た。
10月も半ばになり、この時間帯だと空気は冬のようにひんやりしている。空には十五夜を思わせるような丸い月が浮かんでいて、今日は北極星がよく見えた。
「疲れただろ」
休ませるために家に連れてきたはずが、結果的に色々と気疲れさせてしまったような気がする。
「ううん。平気」
海月はご飯を食べたからなのか足元もしっかりとしていて、昼間の出来事が嘘のように血色も良くなった。
「お前が飯食ってんの初めて見たよ」
学校でも昼休みになればどこかに行ってしまうし、友達がいない海月が誰かと食事してるところなんて見たことがなかったから。