100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
「けっこう食べてた気がするけど、無理してた?」
「ううん。美味しかったから食べたんだよ」
この言葉を聞いたら母さんはますます海月を気に入ってしまうだろう。
「なら、毎日来てよ」
「え?」
「なんにも食べてないんじゃないかって思うより、少しでもなにか口にしてるの見れたほうが安心する。俺が」
海月の唇が言葉を探すように動いたけど、なにも返事をしなかった。
さっきの玄関先でのこともそうだ。『また来てね』と言う母さんに海月は絶対に『はい』とは言わないし、次に繋がるような約束を避けているように感じる。
「……佐原が見た目と違って、私に世話を焼いたり無視しても放っておいてくれない理由が、今日分かった気がする」
「……?」
「お母さん、とっても優しい人だね。佐原がすごく暖かい場所で育ったんだって、家の中の雰囲気を見て思った」
珍しく海月が思いふけるような眼差しをしていた。
「……お前の家はそうじゃねーの?」
その質問に、海月はやっぱり答えてはくれなかった。