100日間、あふれるほどの「好き」を教えてくれたきみへ
「佐原ー。居眠りしてるならお前だけ女子のチームに入れるからな」
週明けの月曜日。騒がしい教室では今月末に行われる球技大会の説明がされていた。
「いいすよ、別に。どうせ一回戦敗退ですぐ暇になるんだし」
「こら、みんなの士気を下げるようなことを言うんじゃない!」
担任の呆れた顔にクラスメイトがクスクスと笑っていた。
「男子はサッカーとか寒くね?」
休み時間になり、沢木がスマホのゲームを開きながら言った。
生徒たちの意見はなく、男はサッカー、女はバレーというのがこの高校での決まりらしい。
なんでも学年関係なくトーナメント形式で戦うようで、優勝すればトロフィーとクラス全員分の図書カードが貰えるんだとか。
正直、全然やる気はしない。だったら一回戦で負けて参加賞のジュースだけでいいかなって感じ。
「なあ、土曜の夜に一組の女子と歩いてたって噂になってるぞ」
「え?」
沢木の言葉に、次の授業は音楽でも聴こうとイヤホンを準備していた俺の手が止まる。
「見た人がいるって。名前は知らないけど、岸さん。冴えないほうの」
冴えないは余計だろ、と思いながらも俺は「へえ」と聞き流す。
「佐原が地味な岸さんといるわけないって笑ってる女子と、最近佐原の雰囲気が変わったのは岸さんにたぶらかされてるからだって怒ってる女子と、意見は半々なんだけど、どっちが本当なんだよ?」
「……どっちも本当じゃねーよ」
歩いてたけど、あいつは地味じゃないし、たぶらかされてるなんてもってのほかだ。