Forbidden Desire~秋風に舞う葉のように~


俺はそっと制服の内ポケットを探ってあるモノを取り出した。


シンプルな白い、ボックスの煙草。ライター。


まだ封の切られていないそれは、実は家にあった母親のもの。
こっそりとくすねてきたのだ。


もちろん、悪いことだとは分かっている。しかし……。


ピッ、と薄いビニールを破った時、音もなく唐突に背中を押された。


「あ………」


俺の背中を押したのはもちろん屋上の錆びた扉。その扉の陰から顔を覗かせたのは。


もちろん。


「颯人………っ!?」


背中を押されしゃがんだまま前のめりに手をついていた俺は、慌てて手の中にあった煙草とライターを内ポケットへと再びしまいなおした。


「今…何隠した?」


「な、別に何も隠してない!」


するりと扉の隙間から身を滑らせ、颯人は屋上に出てきた。


俺と同じようにしゃがみ込んで、ニッと勝ち気な笑み。





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