Forbidden Desire~秋風に舞う葉のように~
――林の言ういい考え、というものに少しばかり不安を抱きながらも、俺はその日真っ直ぐに帰宅した。
父親も母親も仕事でいない家の中は静かだ。
「…ただいま」
冷え切った家の中、自分の声がやけに大きく響いて、ひどく心細く感じた。
誰もいないことなんて、いつものことなのに。
ふっ、と自分を笑いながら俺は2階の自室へ上がって鞄を床に放り出した。
その拍子に中身が飛び出た。
「うわ……うぜぇ」
思わず舌打ちをしながら、その中身にチラ、と目をやれば一冊の文庫本に視線が留まる。
「あ……」
颯人に、借りた本だ。
俺はその本を拾い上げ、ベッドに寝ころんだ。
ボロボロに読み込まれ柔らかくなっている表紙に、そっと触れた。
まるでそこに颯人の温もりが残ってやしないかと、探すように。
…そうだ、明日颯人を呼び出す口実に、コレを使えばいいか。