Forbidden Desire~秋風に舞う葉のように~
「あ…そういえば貸してたっけ、忘れてた。……っていうか上手くはぐらかしてね?」
「……そ、そんなこと、ない」
慌てて首を振りながら、俺は薄い文庫本を手渡した。
「そのさ……詩、好きなの?」
「え?」
「その本、一ページだけやけに癖がついてたから……」
そう、昨日この詩集を読んだ時に目に留まった詩。それが……。
「ああ、“鴉たち”?」
ふわりと微笑んで、颯人は本をパラパラとめくり始めた。くせがついているせいか、すぐにそのページを開く。
「なんか好きなんだ。ほら、ここの屋上って結構カラスが多いだろ?なんか妙にマッチしててさ……。好きといっても前半部分かな、後半は少し雰囲気が変わるから」
そう話す颯人の目は生き生きしていて、楽しそうだ。その様子を見て俺も自然と口元が綻んでしまった。
やっぱりこの笑顔が好きだな。
なんてバカな事を心の中で呟いていた。