Forbidden Desire~秋風に舞う葉のように~
「あれ、螢?……もしかしてずっといたの?」
「あ、あぁ…裏で、寝てた」
てっきり颯人はあの女子と帰ったと思いこんでた俺は、慌てた。
顔が強ばる。
「な、何読んでんだ?」
あの茜ってヤツのことは口にしたくなかった。だから俺は知りたくもない颯人の手の中の文庫本を指差した。
「あぁ、これ?詩集だよ」
ピラッと表紙を見せて微かに笑う。
本の表紙には“地獄の季節”……。
「ここで初めて会った時もソレ、読んでたよな?」
「そうだっけ?好きなんだこれ。螢も読んでみる?」
そう言って颯人は俺に文庫本を差し出した。
間近で見ると、表紙や背表紙が擦り切れている。古いのだろうか、本の色も少し黄ばんでいた。
相当読み返してるのがわかった。
「いや…俺はいいよ、詩なんて読んでもわかんねぇし……」
そう言って本を颯人に返そうと差し出した。