Forbidden Desire~秋風に舞う葉のように~
手早く制服に着替え、階下へ降りる。母親が台所で忙しなく動いていた。
「あ、螢、おはよう。トースト焼けてるから食べてってね。母さんもう出掛けるから!」
俺の返事も待たず、母親は台所を後にし、薄手のコートを羽織り鞄を手に玄関へ。
彼女は近くの和菓子屋で働いているのだ。
「行って来まーす!螢、戸締まりよろしくね!」
「はいはい…ってもういねぇし……」
バタンと閉じた玄関の音を耳にし、俺は苦笑いでダイニングテーブルの上にあるトーストに手を伸ばした。
その時――。
静かな家の中に、バカでかいチャイムの音が鳴り響いた。
朝っぱらから…誰だ?
面倒くさいと思いながら玄関へ急いだ。
そして何も考えずに開けたドアの向こう。
有り得ない人物が、そこに立ってた………。