覚悟はいいか!【完結しました】
言えないよ
「優…優…」
大好きな声
大好きな温もり
その声に弾かれるように重い瞼を持ち上げた
ゆっくりと視界に広がる光がなんだか眩しかった
「優!優!」
「まこ、とさん、」
誠さんが優しく微笑んで頭を撫でてくれた
身体が重い
「痛いところないか?」
痛いところ?
手を動かそうとしたら痛みが走る
身体中包帯だらけだ
「………っっ」
「無理するな、優、階段から落ちたんだよ?
覚えてるか?」
その言葉に身体が震えた
最後に見た顔
彼女にあんな顔させたのは、私なんだ
「優、大丈夫か?もうすぐ医者来るから」
それから暫くして女医さんがやってきた
名札には川口と書いてあった
優しく微笑んで「よく頑張ったわね」と頭を撫でてくれる
そのあと、問診があった
痛みや吐き気、頭痛、記憶の確認も
喉は少し痛かったが声もちゃんと出た
驚いた事に私は三日ほど眠っていたらしい
「武内くんが心配して死にそうだったわよ」
「うるさい、両親に連絡してくるよ」
そう言って誠さんは病室を出ていった
誠さんの目には涙が浮かんでいた
「武内くんと浜口くんとは高校の同級生なのよ」
「そうなんですか?」
「貴女の事が余程大事なのね、二人とも
津川さん………階段から落ちたの覚えている?」
私は小さく頷いた