覚悟はいいか!【完結しました】



ガシャンとこの静かな雰囲気に似合わない音が響いた


「最低!」


そう言ってパシンと叩く音の後に椅子がひっくり返る音とが聞こえて
女性の後ろ姿が見えた

うわっ!女性は男性を平手打ちして颯爽と出ていったと言うところか
修羅場?
思わず後ろを振り向いた


「おい、誠、お前いい加減にしろよ」


マスターが面倒くさそうにおしぼりを渡していた
マスターで見えないがおしぼりで拭いているようだ
お酒も掛けられたんだ、べたべたしそう
マスターの知り合いなのかな?


「いい男、」

「そうなの?」


私は背中を向けてるのでもう一度振り返って見るのもどうかと思う
さっきはマスターで殆ど見えなかったから


「あぁ、悪い」


その声にゾクッとした
もちろん、悪い意味で
それは、色気の含んだ聞き覚えのある声
ギギギとロボットの様に振り返ってしっかりと目が合ってしまった


あぁ、やっぱり
相手も驚いた様に目を開いてそのあと気まずそうに頭を掻いた


「なに?優、知り合い?」

「あ、いや」


私は振り返った身体を慌てて戻したけど、後ろでガタッと音がした

帰って!お願い!


そんな願いは空しく「津川」と私たちのテーブルに歩いてきて声を掛けられた


「武内……課長…………」


あぁ、神様


男にはヤり逃げされて
社内一のプレイボーイの修羅場に遭遇した私は
もう神様にも見放されましたか?





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