略奪"純"愛 『泣かすなら俺がもらう』
打ち合わせが終わり、みんなは席に戻ったが、俺はその場で送別会の店を予約するため、会議室に残った。

すると、春山さんだけは、その場に残った。

「小川、大丈夫か?」

俺の肩に手を置いて聞く。

「はい。」

「何もしてやれないかもしれないが、話
ぐらいは聞いてやれる。
いつでも声掛けて来いよ。」

そう言って、春山さんは会議室を出て行った。

この人は、どこまで気付いてるんだろう。

俺は、思わず緩みそうになる涙腺を締め直して、居酒屋に電話を掛けた。


その後、席に戻り、送別会の案内を作る。

印刷をしてそのまま回覧に回すと、春山さんの隣の竹本が大声を上げた。

「ええ!?
これ、ほんとなんですか、伊藤さん!?」

「え?」

竹本は俺が回した回覧を結に向かって、ヒラヒラさせている。

竹本は、埒が開かないと思ったのか、首を傾げる結に、紙を持って走ってきた。

「これです! これ!!」

回覧を見た結はひとつ大きく深呼吸をして、

「ほんと。急でごめんね。」

と謝る。

「結婚は?」

「8月ぐらいで考えてるけど、まだ、式場も
決まってないから。」

8月なんだ…

「そうなんですね〜。
はぁ… めっちゃ、驚きましたよ。

あ、おめでとうございます!!」

竹本は結の手を取って、ブンブンと握手をした。
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